今回は実際のレースをどう走ったのかをお伝えします。マニアックな表現で理解できないこともあるかと思いますがお付き合いください笑
レース当日の朝はなにかと慌ただしくなりますので、すべて前日までに段取りをして下ろすものをまとめておきます。今年は飲食料以外は前日に整いました。
ドックアウトまでに気象予報を再確認し、セイルチョイスと艤装品、飲食料を最終決定します。
チームで記念撮影をしたらいよいよスタートエリアへ。
第一章 スタート-神の島WP
スタート前のルーティンを一通り行いレースに集中します。
例年通りどんどん風が落ちてきました。やはり予報はあてになりません。
局地的な影響で予報より風がありません。
スタートライン近辺は今回も潮流の方向も風向も違うので悩みました。
また今年からスタートラインがシグナルボート(本部船)が左側、アウターマーク(ドローンマーク)が右側というスタートライン設定に変更。
神の島WPまでは右側のドローンマークの方が近くさらにスタート前に南からパフがそよっと下りてきて高さ的にもドローンマーク側有利なスタートライン。
予告信号からドローンマーク側は大混戦。風が弱く潮流も南流が強くSTBでラインナップすると身動きが取れなくなるので我々はつまらない接触事故でレースを台無しにしたくないので低いポジションからポートアプローチでラインナップ。
潮に押されながらラインに近づき上集団下側から無難にスタート!
しかし最小クラスの小型艇なのでいつものように走り負けてどんどんフランケットの影響で遅れる展開。いつものことですがやはり気分が悪い、必死に走らせます。
状況を打開しようとCODE60をホイストするもアングルが取れないため後続からくる大型艇とオーバーラップ、避けるためにジブアップ、その後フリートに上突破してもらい一番下に出たタイミングで再度CODE60を開く。
スピードで前に出す!ヘディングはぎりぎり神の島WPを向いている。
ここから風がリフトしながら弱くなりCODE60が炸裂!なんとAクラスの上位艇まで追いつく展開に。
スタート後高さをキープした大型艇は潮の影響もありリフトしながら風速が落ちジブとA0の狭間でジブで落としながら走るためスピードに乗らない、逆に我々はヘッドアップしてプレッシャーをゲットできる分圧倒的なアドバンテージを得る。
神の島WP手前5マイルのところでさらに風がリフトし始めA0にチェンジ。潮流の影響で波が悪い。
そして神の島WP付近、ほぼ無風。
やっぱり予報は当たらない。というか局地的な影響で(潮流で風をフローさせている)風を遮っている。
我々は次のパフ/シフトのタイミング(夕方-夜-深夜-朝)を考慮して計画通りラムより南のコースを選択。
ポンと南西の風が入り即A1にピール!
前から数えるとなんと!7番!? ミラクルです!
ドックアウト前の予想通りの展開です。
ここから利島までSTBの長いスピード競争が始まる
第二章 神の島WP-利島
例年、この時点で先行艇は霞んで見えないが今年はよく見える。
風速も徐々に上がり始め安定してきた。予想と反したのは後ろからもらうはずだった潮流がずっと前から1ノットぐらい喰らっていたこと。やはり海流概況図とか信用できない。。
南からの大きなうねりで小型艇は煽られやすいので走りにくい。
大型艇にどんどん抜かれながらもVMGをキープすることに努める。
夕方になり予想より早く西っ気に振ってきた。風速は15ノットぐらいで安定していてBS、ヘディング、AWAを見ながらセイルインベントリーも考えここでA1からS1にピール!
VMCを稼ぐ方にスイッチ、ラムラインに対して南7マイルをパラレルに並走。
しかし、うねりが高くやはり走りにくい。我慢のダウンウィンドが続く。
経度的に御前崎沖付近は風速も20ノットを超えてきた。
うねりのトップとボトムで風向風速が変化するのでセイルトリムもヘディングもキープするのに苦労するがうねりに煽られ1,2度ブローチング!
予防策でスピンがうねりでぶれない程度に硬め(浅め)のシェイプにトリム。
22時頃から一人づつワッチ交代を始める。
私は2時から4時のオフ。
一時間ぐらい寝れただろうか、先行艇はジャイブをはじめて北上しているというタイミングで起こされジャイブポイントを探る。自艇のポジション、予報の風向風速、実際の風向風速、海流概況の潮流、実際の潮流を考慮してライバル艇が前を切り同じラインでジャイブPORTタックへ。ラムラインに寄せる。
ラムライン南2マイルのところちょうど石廊崎沖で再度ジャイブでSTBタックへ。ヘディングは新島の北側。
空が白けてきた。「あれメインのタックシャックルが無い」しかもタックシャックルのスライドカーが一つ外れていることに気づく。夜中のブローチングでタックシャックルが飛んだのだろう。すぐさま伊藝さんがラッシングで応急処置。相手はステンレスで角張っているので外皮付きの細引きで対応。
利島を南からアプローチ、真後ろから2ノット以上の潮をもらいご機嫌なアプローチ。
次は利島をどれくらい離すか?だが風向的に南側の断崖絶壁をなめるように回り込んで吹くだろうと予想。
勝手にガルダの法則と名前を付けてブランケットはそんなにないと判断。
※イタリア北部の湖、世界でも絶好なセイリングのメッカ
予想通り利島に回り込んで風が吹き利島の北東側でジブアップ/スピンダウン、北上を始めリーチング、20ノットオーバーの吹き下ろし。
とその時、無情にもスライドカーがみるみるうちにトラックから外れだす!!
へっとぅうぃん!メインダウン!
ロスを最小にするためにメインを飛ばされないように押さえながらジブだけでヘディングをキープ。
第三章 利島-大島
気を取り直しメインアップ!相変わらず西から東へ2ノット以上で流れているためCOGとにらめっこしながら大島を目指します。風速が落ち始めジブ外取りからリーチングストラットとハイホイストのコンビネーションでボートスピードアップを目指します。
リーチングストラットが効いてるのでジブが「袋」にならない分上部がシバーすることなくしっかり流れるためメインにもバックウィンドが入らないためメインが適正にトリムでき効果てきめん。
その頃、ファーストホーム争いのトップ2艇はカームにつかまっているのかバウが初島に向いて苦戦している模様。
相模湾は北上するにつれ風が落ちている。
その他のAクラス/Bクラスはセオリー通りのコースを引いていてさすがだなーと感心しながらも我々はここで遅れてはいけないと船を止めないように必死のセイリングが続きます。
大島風早をクリアできるポイントでA0にピール!船内荷物も前へ移動。
マストトップを見上げると、ん?
なにかおかしいぞ?
マストトップのフリッカーが折れてぶらぶらしてるではないか!
第四章 大島-江の島
トラブルを対処し満を持してA1へピール!風早を抜けて潮に乗りSOG9ノット台で北上します。
どんどん風が弱くそして太陽が高くなりだしデッキ上はとてつもない暑さ、そして眠い。。。レースに集中してないと完全に暑さにやられてしまうと思い。周りを見渡しながら「絶対に勝つんだ!」という強いモチベーションでトリムし自分自身を奮いだたせます。
ディスプレイの潮の方向とCOG、SOGを見ていると大島北側の潮流は自論通りの流れをしていると判断しジャイブして潮に流されつつCOG的には90°を向きフィニッシュの江の島から離れますが風向の階段を一気に駆け降りることに成功し大きく前に先行していた艇団に追いつきました。
が、しかし我々のところも風がなくなりヘッドアップしてもジェネカーがはらまなくなりました。
そして最後の武器、こんな時のために検討を重ねて特注制作していただいたスピンクロスのウィンドシーカをトップホイスト!するとどうでしょう。今までバサバサと揺れていたメインセイルが安定しセイルに風が流れるようになり走り出しました!
調子いいです!(BS0ノットの世界から脱却!)そろりそろりと走り続けます。
ウィンドシーカでしっかり走り風もそよそよと入りだしたのでジェネカーを再度ホイスト。気持ちよくセイリング。(灼熱地獄でしたが気分的に)
10ノットのパフが入ってきたタイミングでS1にピール。順調に北上。
気持ち的には「これは勝てる!」と思った矢先。。
無情にもみるみるうちに風が消えて風速5ノット台に。。。
やべぇ。。
一気にフィニッシュタイムが遅くなり総合優勝が危うくなる。
すかさずA1にピール!
とにかく船を止めないように集中してスケーティング。
風速3ノット。。。ウィンドシーカにチェンジするかこのままキープにするかBSとにらめっこしながらジレンマが続く。
一度船を止めたら数十分のロスになるためもう必死に走らせます。完全な夕凪の前にはフィニッシュしなければ!
唯一の救いは後ろからコンマ5ノットの潮をもらっていること、心強い。
そんなこんなで最後まで集中力を切らさずに16:30:50にフィニッシュ!!
なんとか無風になる前にフィニッシュできました!!
昨年は大型艇有利な展開でしたが今回は先行艇が止まっていたので運が良くて勝つことができました。
大きな勝因の一つ目はドックアウト前のミーティングで話した神の島WPまでの攻略と利島までのレーンの確保、そして大島から江の島までの相模湾の攻略でしたが終わってみるとほとんどが予想通り上手くいきました。予想外だったのは神の島WP-利島までの逆潮だけです。
二つ目の勝因はどのチームに対しても誇れる100%妥協しないレース準備と高いレベルでの持続的なSAILFASTの実現、そして適切なタイミングでのジャイブやセイルチェンジに尽きると思います。
〈KLC Horizon 6〉にとっては総合優勝5回で大会史上最多記録です。
幸運にも私は4回の総合優勝を掴むことができました。
今回もゲン担ぎのうなぎパワー炸裂しました笑
最後に今回も邨瀬愛彦オーナーのオーナシップとチームワークが総合優勝を引き寄せたと思います。
ショアクルー、デリバリークルーを含めた〈KLC Horizon 6〉の皆様、総合優勝おめでとうございます。
ありがとうございました。
暑かったパールレース、楽しかったパールレース、悔しかったパールレース、恐い思いをしたパールレース。
さて、来年はどんなパールレースになるでしょうか?
来年のパールレースに向けての準備はすでに始まっています。
なにから手を付けていいかわからない場合など一度コンサルしてもらいたいと思うチームの方はお気軽にご連絡ください。
お待ちしております。umihiko(アットマーク)onthebreeze.net
上位成績
IRCクラスA
1位 クレセントIV(J/121)
2位 サマーガール(クラブスワン42)
3位 レディ カノン(J/130)
IRCクラスB
1位 ハルカ4(イタリアヨット11.98)
2位 アンディアーモIII(ファー36 MOD)
3位 フォンテーヌゼロ(J/111)
IRCクラスC
1位 アフロス(カー33)
2位 ナルミ(ヤマハ33S)
3位 マジュリア(ベネトウ・ファースト36.7)
IRCクラスD
1位 KLC ホライズン6(横山30R)
2位 ダンシングビーンズIII(シーム31)
3位 ヘリオス(パイオニア10)
IRCクラス総合
1位 KLC ホライズン6
2位 ハルカ4
3位 アンディアーモIII